すぎの森幼稚園
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第54回 卒園式

2023年03月17日(金)園生活園行事学び

*在園児向けにお伝えした内容と同じです。


 卒園式前日の昨日、年少児がとことこ歩いて誰かを探している様子。名前を聞いてその子の場所を教えると、手紙を渡したかったんだね。 いつも優しくしてくれた年長組のおにーさん、おねーさんたちと幼稚園で会えるのが最後の日。年少児の心の中に人の温かさを感じさせてくれたのではないでしょうか。年長児が備え持つ思いやりの気持ちも、自分たちが小さい時に優しく接してくれる人がいたから。その思いやりはまた、年長から年中・年少へ受け継がれていきます。

私が保育を学ぶ中で感銘を受けた言葉がありました。ロバート・フルガムという人が残した言葉。

 「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」と言う言葉です。

「人間、どう生きるか、どのようにふるまい、どんな気持ちで日々を送ればいいか、本当に知っていなくてはならないことを、わたしは全部残らず幼稚園で教わった。人生の知恵は大学院という山のてっぺんにあるのではなく、日曜学校の砂場に埋まっていたのである。わたしはそこで何を学んだろうか」

 何でもみんなで分け合うこと。

ずるをしないこと。

人をぶたないこと。

使ったものは必ずもとのところに戻すこと。

ちらかしたら自分で後片付けをすること。

人のものに手を出さないこと。

誰かを傷つけたらごめんさい、という事。

食事の前には手を洗うこと。

つり合いの取れた生活をすること。

不思議だな、と思う気持ちを大切にすること。

(「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ」
ローバート・フルガム 河出書房新社 一部抜粋)

 子どもたちは幼稚園という場所で、遊びやクラス活動を経験していくことで本当に様々なことを学びました。それは、目に見えるような成果ではなく、非認知能力と呼ばれ「幼児期に育まれて欲しい」と言われるチカラです。(非認知能力について話すと長くなるので割愛しますが、やり抜く力や諦めない気持ち、自制心、協調性や社会性などのことです)

 幼稚園では各小学校宛に、一人一人の子どもの育ちを記録した「幼児指導要録」というものを製作し送付しています。担任が記録した子どもの育ちの一部にこのように書いていました。

 「遊びの場面では、友達の様子をよく見て、気持ちを合わせながら遊ぶ姿が見られる。得意なサッカーでは、シュートが上手くできずに落ち込む友達に、優しく教えた。ボールを地面に置き、蹴る目安の場所に線を引いて分かりやすく工夫して伝えた。」

「友達の様子をよく見る」→周囲に目を向ける視野が広がっている。そもそも周囲に目を向ける為には自身の安定した情緒が必要。

「気持ちを合わせながら遊ぶ姿がみられる」→身近な人と親しみ関わりを深め、一緒に活動する楽しさを味わう。

「得意なサッカーでは、シュートが上手く出来ずに落ち込む友達に優しく教えた」→得意になるまで、諦めずにやり遂げる力が身に付く。達成感を味わい、自身を持って行動するようになる。友達との関りを深め、思いやりを持つ。言葉による伝え合い。

「ボールを地面に置き、蹴る目安の場所に線を引いて分かりやすく工夫して伝えた」→共通の目的の実現に向けて、考えたり工夫したりする。協同性・思考力の育ち。

 一部を切り取りましたが、その一部だけでもこれだけの育ちが子どもにはあります。これらは一朝一夕で身に付くものではありません。長く長く時間がかかります。 

 卒園式の翌日、大学で初等教育を学んでいる学生の方が園に見学に来ました。その方は、小学校での実習経験と実情を見て、『やはり幼児教育が大切だと思い、幼児の姿を改めて見てみたい』と言っていました。また、『私自身、幼稚園での生活がすごく楽しく、学校に行っても毎日楽しく過ごすことが出来た。その経験から教師を目指しています』と話してくれ、なんとも素晴らしい志しだと思い、「母園はどこなんですか?」と聞くと、なんとすぎの森幼稚園の卒園児だったんです。嘘みたいな話ですが、本当の話です。

 有難いことに沢山の思い出話を聞かせてくれました。私が何より嬉しかったのが、大人になっても幼稚園での「楽しい」が記憶として残っていること。これに尽きます。
 私が卒園式のときにお話しした(話していたつもりになっていたら申し訳ありません)「幼稚園で過ごした『楽しかった』は、小学校に通う為のチカラになる」を、この大人になった卒園児が証明してくれたように感じました。

 小学校実習を終えた卒園児は、以前小学校の先生が言っていた事と同じことを言っていました。
「小学校からの学習は、小学校に入ってからで十分です。それよりも、幼児期でしか経験できない事を沢山経験してきて欲しい」
 それはロバートフルガムのいう、「人としてどう生きるか」という事に繋がるのではないでしょうか。

 小学校に進学すると、子どもは幼稚園に来ることをちょっと恥ずかしがります。「もう幼稚園生じゃない!」という気持ちがあるのかもしれませんね。
 でも、幼稚園という場所が、子どもが何か困ったり不安なことがあった時に、いつでも頼れる場所、帰ってこれる場所でありたいと思っています。そういう場所が家庭だけでなく、もう一つあるという事を、子どもたちが知っていてくれると嬉しく思います。

 卒園式が終わった後、早速職員室でDVDと卒園アルバムを拝見しました。職員みんなで、ただただ「みんなかわいいね」と口を揃えて話していました。可愛い=愛おしい とお考えください。 色々と至らぬ点もあったかと思いますが、子どもたちに愛情を持って関わらせていただきました。お子様を通園させて下さり、ありがとうございました。
 この場でのお礼となり大変恐縮ですが、若杉会役員、アルバム委員、卒園委員の皆様。卒園式を迎えるにあたりご準備していただきありがとうございました。

 最後になりますが、私たち大人も一人一人違うように、子どもたちも一人一人違います。一人一人違うからこそ、一人一人の良さが必ずあります。その良さを大切にしていただきたいと願います。
そして子どもの将来が幸せなものであることを心より願っております。ありがとうございました。

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